彼女の実家は自営業を営んでおり、幼い頃から両親は忙しく働いていて、あまり家族でゆったりした記憶がありませんでした。「人はどれだけ働いたかで価値が決まる」という家訓のようなものが家族全体に浸透していて、いつも限界まで頑張ることが美徳とされていました。
彼女も親が忙しいのを幼心にも充分分かっていましたから、少しくらい風邪で熱っぽかったりお腹が痛くても我慢するのが普通でした。それを訴えると「弱い子はうちの子じゃない」と言われました。
「何でもひとりで出来る手のかからない子」になった彼女は、大人になって更に頑張ってしまったのです。
セラピーで彼女の心の声を聴いていくと、
甘えたかったのに甘えられなかった
もっと遊びたかった
自分のことを認めて、愛してほしかった
という思いに満ちていて何度も悲しい涙をこぼしました。
子供は環境を選んで生まれてくることはできません。
自分ひとりで生きていくこともできません。
出会った親に気に入られ愛されようと、その期待に応えようとします。それが自分の望みではなくても。
セラピーで幼い自分の思いを理解して、一緒に遊んだり、抱きしめたりというイメージワークをしながら「今」の自分の心にゆとりを育んでいきました。
イメージの中の幼い自分が子供らしい表現や笑顔を取り戻していくと、大人の彼女もイキイキと生活を楽しむようになっていきました。
実際でも幼い頃にしたくてもできなかったこと(で今でも実現可能な事)を生活に少し取り入れてもらいました。
それは、何のことはないちょっとした寄り道だったり、お菓子を買うことだったり、動物園や遊園地に行ってムダ使いをすることだったり・・・なのですが、自分が自分の為にしている行為であり、とても楽しかったようです。
彼氏ができました。でも一つ問題がありました。
自分のことを分かってくれない、甘えさせてくれないと感じると、それを話したり、コミュニケーションをとる前に怒りが湧いてきて心のシャッターを閉ざしてしまうのです。
そこで、認知療法を通して、自分はどうしてそう感じるのか、どうしてほしかったのか、相手はどうなのか等、様々な角度から物事を見るようなノートをつけてみました。すると、無視されたように感じたけど、彼が違うことに気をとられていただけでそんなつもりはなかった。もう一度タイミングをみて言ってみよう、と具体的に変わっていきました。
いろいろ大変だったけど、病気になってよかった。
病気にならなければずっとあのままの自分で一生を過ごしてたなんて・・・
「今」がいちばん楽しい、と言っています。
現代人は忙しい。日本は特に厳しい環境かも知れません。
もう少し「ゆとり」を持ちたいと思っても、状況が許さないということもあるでしょう。
でも、自分の心と体を守ってあげられるのは、アナタしかいないのです。
予期せず倒れてしまっては、そこで効率の悪い時間を強制的に過ごすことになってしまいます。
もう少し、心や体の声に耳を傾けて、スピードを緩めてみてください。
それでも充分に頑張っているのですから。